業務用エアコンの交換のデメリットついて
「まだ使える」が一番のムダかも?
浮いたコストを、次への投資へ
高額な初期費用
業務用エアコンの交換を検討する上で、誰もが直面する最も大きなハードルは、その高額な初期費用です。多くの方がご家庭で使用されているルームエアコンの感覚で費用を想定し、実際の見積金額との大きな隔たりに驚かれるケースは少なくありません。家庭用エアコンと比較して、業務用エアコンは本体価格そのものが高価であることに加え、設置工事も大規模かつ複雑になるため、総額が数十万円から、場合によっては百万円を超えることも珍しくないのです。
機器本体の価格
業務用エアコンは、家庭用とは比較にならないほどパワフルな能力と高い耐久性が求められます。広い空間を効率よく冷暖房するための強力なコンプレッサーや、長時間の連続運転に耐えうる頑丈な部品で構成されているため、必然的に本体価格が高くなります。
馬力(能力)による価格差
オフィスの広さや熱源の多さに応じて必要な馬力が異なり、馬力が大きくなるほど価格は上昇します。例えば、小規模な事務所で使われる3馬力クラスと、広い店舗で使われる10馬力クラスでは、本体価格だけで数十万円の差が生まれます。
機種タイプによる価格差
設置の自由度が高い天井カセット型や、意匠性を損なわない天井埋込ダクト型などは、壁掛型に比べて構造が複雑なため、高価になる傾向があります。
専門的な設置工事費
家庭用エアコンの工事とは異なり、業務用エアコンの設置は、その規模と要求される専門技術の高さにおいて一線を画す、大規模な作業が多く含まれます。この違いは、機器の重量や能力、電気系統の複雑さ、そして関連法規の遵守といった多岐にわたる側面に起因します。まず、機器本体の物理的な大きさと重量が全く異なります。家庭用エアコンの室外機が成人一人で運べる場合もあるのに対し、業務用、特にビルの屋上などに設置される室外機は数百キログラムに達することも珍しくありません。そのため、搬入・設置にはクレーン車や高所作業車といった重機が不可欠となり、作業計画には土木工事に近い緻密さと安全管理が求められます。
電源工事
新しい機種が必要とする電源容量が既存の設備では不足している場合、分電盤の改修や専用の電源回路を増設する工事が必要になります。
内装の補修工事
天井埋込型のエアコンを交換する際、新しい機器のサイズが異なると、天井の開口部を広げたり、逆に塞いだりする作業が発生します。その後のクロス(壁紙)の張り替えなど、内装の原状回復費用も考慮に入れる必要があります。
建物の構造補強
室外機の重量によっては、設置場所の床や屋上の防水層、壁面の強度を補強する工事が求められることもあります。
結論
重量物の取り扱いや電気工事、法規制への対応に加え、天井内での複雑な配管ルートの確保や、火災報知器など他の設備との干渉を避けるための設計知識も不可欠です。このように、業務用エアコンの設置は単なる家電製品の取り付け作業ではなく、建築、電気、法規といった複数の専門分野にまたがる総合的なエンジニアリング技術が凝縮された、極めて専門性の高い工事なのです。

